書評『こんな僕でも社長になれた』

レンタルサーバー会社”ロリポップ”を創業した家入一真さんの自伝です。誕生、少年時代、引きこもり、就職、結婚、起業、そしてロリポップがGMOに買収されるまでのお話です。

内容

少年時代

福岡県宗像市の出身で昔はかなり貧乏だったそうです。8畳の居間と6畳の子供部屋、脱衣所のない風呂。そんな家に家族5人と犬1匹で暮らしていて、夏以外は風呂は2日に1回。

小さい頃は周りの笑いを取るのが好きなお調子者だったのですが中学二年の時に友達に向かって発した言葉が原因で仲間外れになりそこから誰からも声をかけられないようになりひとりぼっち。

必然的に勉強に励み高校は難しいとされる県立高校に入学、今までのことは何もなかったように一からやり直そう、ひょうきんで人気者の自分に戻ろうと頑張りますが一年半のぼっち生活はかなり身体に染み込んでしまってたらしく高校でも孤立。登校拒否そして退学。

そこから引きこもり生活に入りますが父が買ってくれた中古のパソコンとこれまた父に勧められたパソコン通信にはまります。しかし後に山田かまちの絵に惹かれ絵を描くようになります。

大学受験

高校は中退したものの大検に合格して大学受験を目指します。地元の大学を受験して合格したのですがそれを蹴って、新聞奨学生となります。朝夕は新聞配達をして学費を稼ぎながら昼は予備校で勉強し別の大学を目指します。

しかし願書を提出し忘れ受験することなしに2浪目決定。2回目は願書こそ提出し東京まで行くが寝坊。

そんな中、父が事故を起こします。命こそとりとめたものの色々とありその後両親は離婚。

社会人時代

地元のデザイン会社に就職します。デザイン会社と言ってもチラシ製作などはクリエイティブな仕事ではなく決められた色と決められた画像をレイアウトするような仕事だそうです。その会社を上司と衝突して退職。

そんな時女子高生とメル友になります。のちのアキコ夫人です。

知り合いを通じてインターネット系の会社に就職。そこではシステム開発の仕事に携わりました。ここでプログラミングの技術を磨きます。その後アキコさんと同棲、そして結婚。入籍して二ヶ月後には妊娠が発覚。

お金なんて、ないならないで幸せになれると、多くの人が言う。
確かに、それはそうだと、僕も思う。幼い頃に過ごしたボロ屋のカビ臭い匂いや、月に一度、楽しみにしていた外食の味は、大人になった今でも、決して忘れることのできない大切な思い出で、お金がなくたって、あのころの僕は、確かに最高に幸せだったからだ。
…だけどもし、そんな僕の家に、もう少しだけ、お金があったら。

起業

家族との時間を犠牲にすることなく稼ぎたいという思いから起業を決意します。作るのはレンタルサーバーの会社。若い女の子でも使えるナウでヤングなレンタルサーバー。もともと起業までは考えてなかったそうですが法人しかダメと取引先の業者に言われしかたなく貯金を元手に30万円の資本金で合資会社設立したそうです。名前はマダメ企画。

その後は奥さんの実家に移り、受託開発で生活費を稼ぎながら会社立ち上げの準備を行います。

準備も整いライバルが1,000円でやっているサービスを250円という激安価格で提供することになりました。

目論見は的中し最初の月から利益を出せたそうです。ただお客さんは順調に増えていったが妻の出産も重なり作業が間に合わずお客さんの不満が高まっていきます。

個人情報のデータベース化、サーバーの設定、設定完了メールの送信などを手作業で行っていました。サポートへの問い合わせメールも対応が遅れクレームが増えます。

仲間

そんな時以前勤めていた会社の同僚と再会し社員第一号となります。徐々に自動化できる作業が増えて行きます。

そしてネット友達であった社員二号が入社。

その後も順調に進み拠点を久留米から福岡に移しPaperboy&Co.に社名変更します。Paperboyというのは新聞配達少年という意味で以前やっていた新聞配達の仕事が由来だそうです。

スタッフも増え、業績も上がりなんとユーザー数は業界最多。その後もドメイン取得事業など新規事業も進めます。

ある時コンサルティング会社経由でGMOから買収話が舞い込みます。その後別の2社からも申し入れがありますが、レンタルサーバーの要となるサーバーを自社で保有していることもあり結局GMOに決めます。

そして東京へ。

感想

いや、失礼ながらまさにタイトルが示す通り「こんな人」でも社長になれるんだというのが印象でした。特に大学受験の願書提出し忘れたり、寝坊したりってちょっとありえないですよね。

もともと起業話が読みたくてこの本を読んだのですが前半は起業とは関係なく家族や学校、職場の話がメインです。色々とブルーな感じで軽いタッチではあるのですが気が滅入りそうでした。ただ前半の数々の失敗もこれらが一つでもなかったら今の家入さんはなかったんでしょうね。もし家庭が裕福だったら、友達にあの一言を発さなかったら…

しかしその後の知り合いのインターネット系の会社に就職してから、特に結婚して子供の誕生あたりからは別人のようですね。普段は頼りないけど必要なポイント、ポイントではしっかりする、そんな感じでしょうか。ミスしていいポイントとミスしてはいけないポイントを本能的に嗅ぎ分ける能力があるんでしょうね。

ロリポップは最初に立ち上げた事業で途中トラブルはあれどトントン拍子に売り上げが上がって買収されて上場、すごいですよね。起業の話って何度も借金して事業失敗して破産して…って感じの話が多いのに。

  • 家入一真
  • ワニブックス

ただその後は色々とやらかしていらっしゃるみたいですが…

  • 家入一真
  • 平凡社