書評『Think CIVILITY「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』

こんなことをされた経験はありませんか?

  • 会話の途中なのに自分が興味を持てないからといってその場から立ち去ってしまう。
  • 会議中なのに電話にでる。
  • 部下を人前であざける、軽く扱う。
  • 部下の仕事ぶりを常に過小評価し、自分の組織の中での地位は低いと思い込ませる。
  • 部下を心が傷つくほどひどくからかう。
  • 成功したときの手柄は自分のものにするが、何か問題が生じたときには他人のせいにする。

こういうことをされるとどういう気持ちになるでしょうか?それは企業にとってメリットをもたらすのでしょうか?

内容

無礼がもたらすコスト

冒頭で書いたようなことをされた人はどういう行動をとるか?調査によると、こういうことになるそうです。

  • 48パーセントの人が、仕事にかける労力を意図的に減らす。
  • 47パーセントの人が、仕事にかける時間を意図的に減らす。
  • 38パーセントの人が、仕事の質を意図的に下げる。

長くなるのですべては書きませんが、ほかにも多くの結果が書かれています。全て否定的な行動です。

著者は無礼な態度のコストとして以下の5つを挙げています。

  • 無礼な人は同僚の健康を害する
  • 無礼な人は会社に損害をもたらす
  • 無礼な人はまわりの思考能力を下げる
  • 無礼な人はまわりの認知能力を下げる
  • 無礼な人はまわりを攻撃的にする

ちなみに”無礼な態度”は行った人がどういう気持ちで行ったかではなく、された方がどう感じたか?が大切とのこと。自分ではそんなつもりはなかったとしても、相手が無礼だと感じたのであれば、それは問題。

無礼な人間のせいで利益や社員を失ったりしても、そのコストは誰にも気づかれてない可能性があります。道徳的な観点からも無礼な態度はとるべきでないが、企業としてはコスト的な観点からも無視できなさそうです。

礼節がもたらすメリット

逆に礼節のメリットとして次の5つを挙げています。

  • 仕事が得やすい
  • 幅広い人脈が築ける
  • 出世の可能性が高まる
  • 礼節ある上司のチームは高い業績を上げる
  • 礼節ある経営者は従業員に安心感を与える

礼節のある態度とは

他人を尊重し、また品位を感じさせる丁寧で親切な態度で、周囲の人たちの気分をよくしなくてはいけない。

部下たちに「自分の持っているものを職場に惜しみなく提供したい」と思わせる職場になるかどうかは、あなたが周囲の一人一人にどういう態度をとるのかで決まる、と著者は言います。

礼節をたかめる

では礼節をたかめるためにはどうしたらよいのか?いくつかのメソッドが紹介されているのですが、私の印象に残ったのは、

「食う・眠る・動く」で自分を大切にする

態度が悪い人自身も、大きなストレスを感じていることが多いそうです。態度を改善するには、自分を大切にすることが必要。栄養のある食事をとり、よく眠り、日常的に運動する。

また、個人の礼節をたかめるだけでなく、企業としての礼節をたかめるための採用システムや人事評価システムなどが紹介されています。

身を守る

まわりに無礼な人がいるときに、どうやって対応すればいいのか?こちらも様々な方法が紹介されています。例えば…

「成功の自覚」が最大の防御策

無礼な人のネガティブな影響を乗り越えるために最も重要なのは「自分は成功している」と思えること。成功しているという自信がわずかでもあれば、考えが後ろ向きになることが少ないそうです。

また、ここでも再度「食事・睡眠・運動」の重要さが挙げられています。

感想

私も冒頭に書いたようなことをされたことは多々あります。そしてそういうことをされると、「この会社のために頑張りたい」という思いには正直なれません。

今まで漠然と感じていた、無礼な態度は見えないコストがかかる、ということをこの書籍が明確にしてくれました。こういうことってどの企業でも多かれ少なかれあるとは思いますが、やる気の喪失とか離職とか、かなりのコストですよね。

業績を上げるための方法や離職率を下げるための方法などは書籍やネットで色々ありますが、結局一番根本である「本人の自発的なやる気」というところがダメだとどうしようもありません。互いが敬意ある態度で接するという、この基本的なことがまず最初に考えないといけないことではないか、と改めて感じました。

もちろん、まずは自分が無礼な態度をとってコストを支払う側にならないように気を付けないといけません…

  • クリスティーン・ポラス (著), 夏目 大 (翻訳)
  • 東洋経済新報社