書評『レスキューナースが教える プチプラ防災』

毎年のように繰り返される大雨・台風、阪神淡路大震災や東日本大震災のような大きな災害。いつどこで災害が起きても不思議ではありません。誰もが自分のこととして防災を考えないといけない時代。何も高額な防災用品を揃えなくても、100均などのプチプラのアイテムとちょっとした工夫で防災ができる、著者の知識と経験に基づいた防災の知識が学べる本です。

内容

第一章 命を守るための備え

第一章では、まず災害が発生した時に無事でいるためにどうすればいいのかを紹介しています。主に地震への対策となりますが、家具が倒れてきたり、物が落ちてきたりといったことを防ぐ対策について書かれています。著者が実際に被災した大阪北部地震での(対策をしてあった)著者の家と(対策をしてなかった)隣人の家の比較写真が、その準備の大切さを物語っています。特に凶器が多いキッチンは、最優先とのこと。

また普段からの水や食料の備蓄、非常用持ち出し袋についても説明されています。

第二章 災害発生!72時間を生き延びる方法

災害発生から72時間が鍵と言われています。その72時間を生き延びるための方法です。

地震の場合、直下型なのか海溝型なのかを判断することが重要だそうです。熊本地震のような直下型の場合、強い揺り返しがあるため、倒壊の可能性がある建物からは一刻も早く退避する必要があります。東日本大震災のような海溝型の場合は津波が脅威となるので、急いで高い場所に逃げる必要があります。またいずれの地震の場合も、上から落ちてくるものが脅威となります。そのため延髄と頭を守るダンゴムシのポーズや、移動中に雑誌などで頭を守る方法が紹介されています。

地震と違って、備えられる水害は避難勧告がでたら速やかに行動することが大切とのこと。書籍では避難所に避難するときのポイントがいくつか記載されています。ペットは避難所には連れていけないことを覚悟しておいた方がよさそうです。子供や高齢者がいたり、周りが暗いなど避難所まで行くのが危険な場合は、避難所にこだわらず自宅の2階や近所の高い建物などの、垂直避難も検討します。

そして情報収集。ラジオで情報を収集したり、家族と連絡を取り合ったりするときの技が紹介されています。

第三章 被災後を生き抜く知恵とテクニック

ここでは復興に向けてパワーを蓄えるために、被災後の生活を快適にする方法について紹介されています。被災したという現実をいつまでも嘆くのではなく、いかに被災前の生活レベルに戻すかに意識を向けます。

断水・停電・ガスの停止といったライフラインが止まる可能性が高くなります。そうなったときにどういうことになるのか、を事前に把握しておく必要があります。断水すれば水は飲めなくなり、風呂で汗を流すことも、トイレすら使えなくなります。自宅避難を中心に、避難所での生活についてのコツも書かれています。被災時の調理、給水車による水の確保、ペットシーツを使った災害用トイレ…などなど。できれば普段から電気・ガス・水道を使わない生活を実際に試してみるといいですね。

第四章 災害が起きても動じない心をつくる

最後の章は防災の心構えです。非常用持ち出し袋に詰め込んだら終わりではなく、定期的に見直す必要があります。避難所までどうやって行くかルートを確認したり、家族とはどうやって連絡を取り合うが決めておいたり…しっかりと事前に準備することで、いざというときにも動じずに行動できるようになります。そんな防災の10の心得が記載されています。

感想

この本を読んだ一番の印象はとても具体的だということ。すべて著者が実践していることなので、机上の空論ではない、実際の経験から編み出された防災の知識を学べます。また著者が女性なだけあって、女性ならではの視点からの防災もちりばめられています。

著者が実際に経験した大阪北部地震での著者の部屋と隣の住人の部屋の比較写真があり、あまりもの違いには驚きました。ちょっとした工夫でここまでの差がでるなら、これはやらないわけにはいかないでしょう。隣人の部屋の片付けには、そうとう時間がかかったのではないでしょうか?

防災とは防災グッズを揃えることではない(もちろんグッズも必要だが)、基本的に自分の身は自分で守らないといけない、避難所に行けばなんとかなるわけではない、防災は生活の一部だということを学べる書籍でした。この本は一家に一冊常備しておいていいかも。