書評『本当は怖い「低血圧」 あなたの「うつ」、実は「低血圧」かも?』

「朝、おきられない」「学校や職場へ行けない」「疲れやすい」など、うつ病かと考えてしまいそうなこれらの症状。実は低血圧が原因かも。間違った治療を受けると大変なことに。

内容

低血圧とは

低血圧とはその名の通り、血圧が低いことです。一般に上の血圧が100mmHg以下で、低血圧特有のさまざまな症状を伴う患者のこと。上の血圧の数字が重視され、下の血圧についてはあまり言及しないそうです。

低血圧とは何らかの理由で血液の循環が悪くなった状態です。

とくに頭部は心臓より上にあるため血液や酸素が届きにくく、ふらふらするといった頭部の症状が出やすいそうです。

低血圧の症状

低血圧の症状として、例として一部を挙げると…

  • 立ちくらみ、めまい
  • 立っていると気持ちが悪くなる
  • 少し動くと、動悸あるいは息切れ
  • 朝がおきられず、午前中調子が悪い
  • 顔が青白い
  • 食欲がない
  • 倦怠感や疲れやすさ

多くの症状の裏には、低血圧が隠れていることがあるとのこと。本書では多くのチェック項目で、低血圧が隠されてないかチェックできるようになっています。

低血圧は症状がうつ病に似ているそうです。そのため本当の原因は低血圧なのに抗うつ剤を処方されて、ますます具合が悪くなるといった事例が後を絶たないそうです。また貧血とも症状が似ていますが、貧血の原因は赤血球の不足で、低血圧の原因とは全く違います。当然治療法も異なります。

低血圧はどうしておこるのか

血圧が低いということは、心臓のポンプ機能である心拍出量がすくないか、末梢の力である総末梢血管抵抗が低いかのいずれか。心拍出量に関しては、一回の収縮で出てくる血液量が低い場合と、心拍数が少ないかのいずれかがおきているとのこと。

心拍数が少なくなることは特殊な場合以外めったになく、多くは1回拍出量が少ないか、後者の血管抵抗が低いケースで、その場合は静脈が拡張し、静脈に血液が溜まっているそうです。

低血圧は立派な生活習慣病

著者は言います。低血圧は立派な生活習慣病と。そして、すべての生活習慣病がそうであるように、低血圧でも遺伝的体質がその大きな要因を占めていると。えっ?遺伝が原因なら治せないのでは?

遺伝的な体質そのものを治すことはできませんが、病気をコントロールして、発症を抑えることは可能です。

またライフスタイル上の問題として、以下を挙げています。

  • 不規則な食事
  • 偏食
  • 小食
  • 塩分やミネラル・タンパク質の少ない食事
  • 運動不足
  • 皮膚の鍛錬の不足
  • 入浴ぎらい
  • 家の中にひきこもりがちな生活
  • 宵っ張りの朝寝坊
  • 蒸し暑いところや湿度の高いところでの生活
  • 嫌なことやストレスフルなことの連続
  • やる気のない生活態度
  • 生きがいの見いだせない生活

こうした不健康なライフスタイルの結果、心臓の力が弱くなり(心拍出量の低下)、また末梢に静脈血(古い、汚れた血液)が溜まって(静脈うっ血)、全身の血液循環が悪くなって発症するとのこと。そして血流が悪くなることで、いろいろな症状が出てくるそうです。

低血圧によって生活の質(QOL)が低下する

人体にある60兆個もの細胞への血液の供給が十分に行われなくなってしまう、低血圧。全身のどこにどのような症状が出ても不思議ではないと、著者は言います。

低血圧にある代表的な症状として、疲れやすさがあります。体がだるい、すぐばてる、無理がきかない、疲れが回復しない、夏の暑さに弱い、冬の寒さに弱い、暑がりで冷え性、季節の変化に体がついていかない…

毎日こんな状態であれば、当然日常生活もつらくなってきます。低血圧の患者は社会環境への適応状態によって、過剰適応(無理をしてまで適応する)と適応不全(適応がうまく行かない)の大きく2つに分けられるそうです。

本書では様々な症状の患者の実例を挙げています。朝起きられず学校に行けない高校生、抗うつ剤漬けになりかけ学校に行けなくなった大学生、交通事故後の鞭打ちが長引きうつと誤診されベッドから起き上がれなくなった会社員…まともな日常生活が送れず、このままでは大変なことになっていたでしょう。いずれのケースも適切な低血圧の治療が功を奏し、社会復帰して生き生きとした人生を歩んでいるそうです。

低血圧の患者は、繊細な人が多いとのこと。普通の人以上に細かい気配りができるため、積極的に創造的かつ建設的な仕事ができます。体力を使う仕事ではなく、細かい仕事、神経を繊細に使う仕事に向いている、と著者は言います。

低血圧を放置することで生活の質を低下させ、かけがえのない人生をつまらないものにしてしまいます。

低血圧の治療

低血圧は、治る病気です

治療の3ステップ

  1. 低血圧について理解し、治療への意欲を持つ
  2. 自分の生活を振り返り、ライフスタイルを改善する
  3. 薬を使った治療

また具体的な行動についても触れられています。例えば、規則正しい食事、チェダーチーズを食べる、調子がよくなっても無理をしない、基礎体力をつける、塩分・タンパク質・ミネラルの多い食事をする等。

感想

私も低血圧で、上が100前後のことが多いです。特にここ数年はひどくなってきている感じです。たちくらみはしょっちゅう。朝は確かに弱く、布団の中で長い間ぐずぐずしています。そのために実際に起きる1時間くらい前には目覚ましをかけてます。ただし正直今まであまり気にしてなかったのが本音です。もともと運動はしてたので、そのおかげで多少は症状が軽減されていたのかもしれません。

本書では様々な患者さんの実例が紹介されています。また数々の患者を治療してきただけあって、具体的な改善方法も示されています。私も参考にしていくつか試しています。特にコエンザイムQ10のサプリは効果があったように思います。DHCの市販のやつです。チェダーチーズもとるようにしました。

一般的に血圧といえば、高血圧に注意!といった雰囲気で、低血圧は軽視されがちです。たしかに死に直結するようなことは少ないかもしれませんが、書籍でもよくでてきたQOL(生活の質)という意味では大変重要です。低血圧も立派な病気で治療が必要、ということを気づかせてもらっただけでも、よかったと思います。