書評『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』

「やらなくては」「どれも大事」「全部できる」

こういう考え方に陥ってしまったばかりに、不要なものに捕らわれ肝心なことがおろそかになってしまう。そしてすべてが中途半端。身をすり減らしながら働いているのに成果が上がらず、どうでもいい作業に追われて仕事ができない…

本当に大事なものを見極めて集中する”エッセンシャル思考”によって最高のパフォーマンスを発揮する方法を身につけましょう。

内容

PART1 エッセンシャル思考とは何か

PART1ではエッセンシャル思考とは何か、について説明しています。

エッセンシャル思考と非エッセンシャル思考

シリコンバレーで会社役員をしていたサム・エリオットは仕事にやりがいを感じられなくなっていました。彼はとうていやりきれない量の仕事を抱え、身を粉にして働きましたが、ストレスもたまり、仕事の質は落ちていきます。会社を辞めて独立も考えましたが、自分にとって本質的な仕事だけをやれ、と先輩からアドバイスを受けます。

そして翌日から仕事を減らすことに専念します。

「この仕事をやり遂げるための時間とリソースは足りているか?という基準で受けるかどうかを判断した。

そしてさらに進んで

「この仕事は、自分が今やれることの中で一番重要か?」いちばん重要だ、と言いきれる仕事しか受けないことにした。

周囲の人たちは最初は残念そうな顔をしたけど、すぐに彼のやり方を受け入れてくれたそうです。

数か月間そのやり方を続けてみると、仕事に余裕ができ、家でもゆっくり過ごせるようになりました。そして重要な仕事でしっかりと成果を上げ、以前よりも彼の評判が上がったそうです。

「何もかもやらなくては」という考え方をやめて、断ることを覚えたとき、本当に重要な仕事をやりとげることが可能になるのだ。

エッセンシャル思考を身につけるには3つの基礎となる考え方を理解する必要があります。

1. 選択 – 選ぶ力を取り戻す

自分で選ぶことを少しずつ放棄して、いつの間にか誰かの言いなりになってはいないだろうか?と著者は問いかけます。選ぶことを忘れた人は無力感にとらわれるそうです。

選択とは行動、与えられるものではなくつかみとるものだと著者は言います。たとえ選択肢が限られていても、その限られた選択肢から何を選ぶかは自分次第です。

2. ノイズ – 大多数のものは無価値である

私たちは幼いころから努力の大切さを教えられます。しかし努力の量を増やしても、いつかは限界が来ます。「努力した分だけ報われる」というのは幻想だ、と著者は断言します。成果の80%は20%の努力に起因するという「80対20の法則(パレートの法則)」を紹介しています。

そして努力の量と成果が比例するという考え方を捨てた時に、エッセンシャル思考の大切さが見えてくるそうです。

3. トレードオフ – 何かを選ぶことは、何かを捨てること

何かに「イエス」と言うことは、その他すべてに「ノー」と言うことなのだ。

中途半端に片足ずつ突っ込むと、あれもこれも失うことになります。

エッセンシャル思考ではトレードオフを当たり前の現実として受け入れ、「何をあきらめなくてはならないか?」と考えずに「何に全力を注ごうか?」と考えます。

PART2 見極める技術

PART2では数ある選択肢の中から本質的なものを見極めるための技術について書かれています。

孤独 – 考えるためのスペースをつくる

多数の物事の中から少数の重要なことを見分けるためには、誰にも邪魔されない時間が必要です。しかしこの忙しい世の中、そういう時間を得るためには、意識して時間をとらなければなりません。

選択肢を調べないことには、本質を見極めることはできません。エッセンシャル思考ではその調査と検討にたっぷり時間をかけます。

集中は向こうからやってくるものではなく、自ら集中できる状況に飛び込んでいく必要があると著者は言います。ここではインターネットにつながらない安宿に2ヵ月泊まって時間を捻出した人の例などが挙げられています。

洞察 – 情報の本質をつかみとる

要点に目を向ける訓練をすると、これまで見えなかったものが見えてきます。点の集まりではなく、点をつなげる線に気づくことができます。そのためには膨大な情報や選択肢をフィルタリングする仕組みが必要と著者は言います。

著者はすぐれた洞察ができる人のお手本としてジャーナリストを挙げています。そして自分の内なるジャーナリストを目覚めさせる方法の一つとして日記をつけることを勧めています。

遊び – 内なる子供の声を聴く

著者は遊びの重要性を説きます。遊ぶと体が健康になり、人間関係が改善され、頭がよくなり、イノベーションが起こしやすくなるそうです。

しかし本当に遊び心に満ちた職場を実現できている会社はめったにないといいます。

遊びは以下の3つの点でエッセンシャル思考に役立つそうです。

  • 選択肢を広げてくれる、視野が広がる
  • ストレスを軽減してくれる
  • 脳の高度な機能を活性化する

睡眠 – 1時間の眠りが数時間分の成果を生む

私たちの最大の資産は、自分自身だ。

自分への投資を怠り、心と体をないがしろにすると、価値を生み出すための元手がなくなってしまう、と著者は言います。優秀な人たちが睡眠不足で自分を壊していっているそうです。

3時間睡眠でバリバリ働くことはかっこよく見えますが、頭が働かなくなりパフォーマンスが落ちます。逆に十分な睡眠は脳の機能を高めます。たっぷりと睡眠をとることを著者は勧めています。

選抜 – もっとも厳しい基準で決める

明確で厳しく、そして正しい基準を採用して、不要な選択肢をシステマティックに却下することで、重要な選択肢を選び取ることが可能になります。

ここでは”90点ルール”というものが紹介されています。100点満点で採点し、90点未満は全て不合格。そうすれば60~70点くらいの中途半端な選択肢に悩まされることがなくなります。

PART3 捨てる技術

PART3では本当に重要なことをやり遂げるために、不要な物事を捨てる技術について紹介しています。

目標 – 最終形を明確にする

最初に切り捨てるべきは、やろうとしている意図にそぐわないものです。そのためには目的をとことん明確に定義しなければなりません。「かなり明確」では駄目で、「完全に明確」にする必要があります。

駄目な目標の例として

  • 世界を変えたい
  • 世界から飢餓を撲滅する

いい例として

  • 2012年までに、あらゆる人がインターネットを使えるようにする
  • ニューオリンズの下9地区に住む世帯のために、低価格で環境にやさしく、災害に強い家を150戸建設する

を例として挙げています。

いい目標を作るためには細かい言葉にこだわらず(バズワードに引きずられない)、目標が達成できているかをどうやって判定するのかが明確である、ことが必要だそうです。

また目的が明確でないと

  • 社内政治が蔓延する
  • 何でも屋になる

等の弊害もあるそうです。

人と国を亡ぼすのは、作業としての仕事である。すなわち、自分の主目的を離れ、あちらこちらに手を出すことである

拒否 – 断固として上手に断る

他人からのプレッシャーに負けず、きっぱりと上手に断ることは、エッセンシャル思考に必須スキルです。と、同時にもっとも難しいスキルでもある、と著者は言います。

ノーというのは誰だって不安です。チャンスを逃す、立場が悪くなる…断るためには、勇気が必要です。

この章では上手に断るための断り方のレパートリーが紹介されています。

  • とりあえず黙る
  • 代替案を出す
  • 予定を確認して折り返します
  • 自動返信メール
  • どの仕事を後回しにしますか?
  • 冗談めかして断る
  • 肯定を使って否定する
  • 別の人を紹介する

ノーを言うことは、優秀な人の必須スキルだそうです。はじめはうまくいかないかもしれませんが、ひたすら練習あるのみ。

キャンセル – 過去の損失を切り捨てる

エッセンシャル思考ではサンクコストに捕らわれず、ダメな行動をすっぱりと切り捨てます。既に投資したお金や時間がもったいないからと言って、いつまでもずるずると望みのない投資を続けることはやめましょう。

編集 – 余剰を削り、本質を取り出す

編集は不要なものや余分なものを容赦なく削り、作品の本質を取り出す仕事です。編集の4つの原則を知ることで、人生は今よりずっとクリアになる、と著者は言います。

  • 削除する…あいまいで分かりにくい要素を排除する
  • 凝縮する…(意味を減らさず)言葉を減らす
  • 修正する…間違いを直す
  • 抑制する…作品に手を入れすぎない

こまめに行動を振り返り、小さな編集を積み重ねることを、著者は勧めています。

線引き – 境界を決めると自由になれる

自分の大事なものを守るために、この先は譲れないという線を引きます。例えば、

  • 土日は働かない
  • 他人の問題を横取りしない(本人が解決すべき問題は、本人に解決させる)
  • 難しい相手とは契約を結ぶ

等です。

一線を引くことで、自分の時間を守り、他人からの余計な干渉を防ぎます。

PART4 しくみ化の技術

PART4では努力せずに自動的にエッセンシャル思考を実現するための方法が説明されています。

バッファ – 最悪の事態を想定する

世の中に確実なことなどありません。予定外のことが起こっても慌てないようにあらかじめ備えておきます。

道路が渋滞しているかもしれない、飛行機が遅れるかもしれない、転んで手首の骨を折るかもしれない、顧客が土壇場で仕様変更を言ってくるかもしれない…

不測の事態が引き起こすダメージをできるだけ緩和するために、あらかじめバッファ(緩衝地帯、余裕)を計画に組み込んでおきます。

削減 – 仕事を減らし、成果を増やす

仕事や日々の生活でのボトルネックを特定して、取り除くことができれば見違えるほどにスムーズに重要なことを達成できるようになるはずです。

成果を生まない努力を辞めます。人を増やし、かけるお金を増やすかわりに、制約や障害を取り除くことを考えます。そのためのコツとして以下の3つを上げています。

  • 目指すことを明確にする
  • ボトルネックを特定する
  • 邪魔なものを取り除く

前進 – 小さな一歩を積み重ねる

変化を起こそうとするとき、派手な目標を掲げがちになります。

人間のモチベーションに対して効果的なのは「前に進んでいる」という感覚だそうです。小さくても前進しているという手ごたえがあれば、未来の成功を信じることができます。小さな成功を褒めて、地道な進歩を促進します。

早く小さく始め、最小限の進歩を重ね、進歩を目に見える形にする、ことを勧めています。

習慣 – 本質的な行動を無意識化する

結果を出しているアスリートには、試合前に儀式のように決められたルーチンをこなす人たちがいます。重要なことをやり遂げるためには、日ごろからの習慣にすることが重要です。

習慣と聞くと創造性やイノベーションとは対極にあるように感じられますが、自動化できるところは自動化し、もっと有益なことに脳を使えるという点で、創造性やイノベーションを実現するためのエネルギーを与えてくれます。

ミハイ・チクセントミハイによると「創造的な人は、自分に合った生活リズムを早い時期に見つけます」とのこと。

同時に悪い癖(起きてすぐメールチェックする、帰りに甘いものを食べる、食事しながらインターネットをする等)を正しい習慣に変えていく必要もあります。

集中 – 「今、何が重要か」を考える

最高の力を発揮するためには、「今、この瞬間」だけを意識する必要があります。過去や未来に捕らわれないようにしましょう。

そのためのテクニックとして

  • 「今、何が重要か」を考える
  • 未来を頭の中に抱えない
  • 優先順位をつける
  • マインドフルネスを身につける

を紹介しています。

未来 – エッセンシャル思考を生きる

エッセンシャル思考の実践には2つのアプローチがあります。一つは生活のあちこちに取り入れる方法、もう一つはエッセンシャル思考を生きるという方法です。

後者ではエッセンシャル思考を生き方の基本に据え、何をするにもそこから考えます。この章では後者になるための説明が書かれています。

エッセンシャル思考を身につけるには時間がかかりますが、一生モノの恩恵を受けられます。

  • 迷わない
  • 流されない
  • 日々が楽しくなる

人生はあまりに短い。それは悲しむよりも、むしろ喜ぶべきことに思える。短い人生だからこそ、勇気を出して冒険できる。間違いを恐れずにすむ。かぎられた時間の使い方を、よりいっそう厳密に選ぼうと思える。

エッセンシャル思考のリーダーシップ

エッセンシャル思考は個人にとってだけでなく、チームや会社の運営にとっても重要なものです。全てをやろうとせず、明確な目的を持って仕事を精選し、あらゆる業務を「より少なく、しかしより良く」の方針で実行することで、チームの結束は強まり、さらなる高みへとブレイクスルーできます。

エッセンシャル思考のリーダーシップについて以下の点を挙げています。

  • 人材の選別にこだわり抜く
  • 目的が完全に明確になるまで話し合う
  • メンバーの役割をあいまいにしない
  • 正しい情報を正しい人に正しいタイミングで伝える
  • 小さな進歩を重ねているかどうか、適切にチェックする

感想

今、何が自分にとって一番大切なことなのかを常に意識する、仕事に限らず人生においても役に立つ考え方です。

非常に分かりやすく、読みやすい書籍でした。ちょっと冗長なところもありましたが、実際の具体例が多くて理解の助けになりました。仕事を断る等、サラリーマンにはちょっと難しい面もありますが。

元々私もこういう考えの持ち主だったこともあって、とても賛同できました。まだまだ書籍に書かれているレベルではできてませんが。とにかく普段から常にエッセンシャル思考を意識していかないと駄目ですね。それこそ習慣にしないといけません。

単なる自己啓発ではなく、哲学的でもありました。短い人生、時間を大切にしたいですね。