書評『電話はなぜつながるのか 知っておきたいNTT電話、IP電話、携帯電話の基礎知識』

インターネット、電子メール、メッセンジャー、WEBサイト…スマホを使えばどこでもネットが使える、ネット全盛の時代。そんな時代に電話の話?

ネットワークの原点、そして高度な品質・信頼性を保つ、電話について学べる書籍です。

内容

第2章 音はどうして伝わるの?

声を伝えるためには、音を電気に変換して、電話線を使って送り出します。

電話局の電話交換機と各家庭の電話機の間は、2本の電話線でつながる電気回路になっています。電話機がスイッチになっていて、受話器を上げるとスイッチがオンになります。その回路には常に交換機という電池がつながっているイメージだそうです。受話器を上げることで、回路がつながり、交換機がそれを察知して、電話をかける準備ができます。

書籍では声が電子の振動に変換され、銅線を流れていき、電子の振動から再び声が取り出される仕組みが説明されています。

第4章 ダイヤルすると電話交換機たちがおしゃべり開始

特定の相手と電話で話すためには、こちらの電話機と相手の電話機をつなぐ必要があります。

電話網には多くの電話交換機が繋がっていて、ネットワークを構成しています。通話元の電話機が繋がっている交換機から、相手先の電話番号の電話機がつながっている交換機まで、たどり着ける必要があります。

電話番号にはルールがあって、市外局番+市内局番の5桁(最初の0は除外)を見ることで、それがどの電話局が管轄する電話番号かが分かるようになっているそうです。こういった情報を元に、つながっている交換機とやり取りしながら、目的地までたどり着きます。

”第6章 電話交換機が「ガチャッ」と線をつなぐ”では、電話番号をもとに次の電話交換機を見つけ、相手側の交換機までつながる仕組みが、NTTの「D70」交換機を使って説明されています。

ちなみにこのやり取りは「共通線」と呼ばれる、声のやり取りとは別のネットワークで行われるそうです。この共通線のネットワークは信号中継交換機(STP)を中心としたネットワークになっています。

さらに本章では0と1のデジタル情報を銅線で送るためのAMI符号・QAM符号、伝送速度、共通線信号フレームのフォーマットやプロトコルについても書かれています。

他にも…

ここでは紹介しませんでしたが他にも

  • 第3章 電話局までの道のり
    • 保安器~電柱の上のクロージャー
    • 複数のケーブルを束ねる「カッドケーブル」
    • 地下を通る地中ケーブル
  • 第5章 これがNTT電話網の構造だ
    • 昔の電話網と現在の電話網
    • 電話局網はリング型、電話網はスター型
    • 「A面」「B面」での共通線信号網の2重化
  • 第6章 電話交換機が「ガチャッ」と線をつなぐ
    • 加入者交換機「D70」の内部構成
    • 回線を識別するCIC番号
    • 電話番号と電話交換機の対応表「トランスレータ」
  • 第7章 声が1万6000個の数値に代わる
    • 音声をデジタル化
    • 複数の音声を同時に送信する多重化
    • 「ふくそう」を防止する仕組み
  • 第8章 電話交換機の心臓部「内部スイッチ」はこう動く
    • 音声を行先に応じて振り分ける
    • 「時間スイッチ」と「空間スイッチ」
  • 第9章 電話交換機を結ぶ絶対切れない「仮想光ファイバ」
    • 仮想的な光ファイバ「パス」
    • パスを作り出す時分割多重
    • パスを入れる箱「VC(仮想コンテナ)」

という章があります。

第11章 集会を開くプロトコル「SIP」

”第10章 IPネットに「声の通り道」作るとは?”からはIP電話の説明です。10章ではIPパケットに電話を乗せる仕組みが、書かれています。

そして、この11章ではIP電話で使われるSIPというプロトコルについてです。

SIPはSession Initiation Protocolの略で、本書ではインターネット上のセッションの案内や終了をみんなに通知する「案内状」と紹介されています。

SIPではIP電話機同士がSIPサーバーを通じて、メッセージのやり取りを行います。このメッセージのやり取りや、ヘッダの内容などについての説明が記載されています。

ただし、この書籍はあくまでも固定電話の話がメインで、SIPに関しては大まかな説明にとどまっています。詳細を知るためには、別の書籍なりを見ることになりそうです。

次の”第12章 声をIPパケットに入れる”、では音声をデジタル化してUDPのRTPで送信します。そして”第13章 ひかり電話の仕組み”ではIP電話でも加入電話並みに、品質と信頼性を高めるNTTのやり方が書かれています。

第15章 どこに行ってもつながる理由

最後の章は携帯電話についてです。

2G、3Gといった世代について(ちなみに本書は2006年出版ということもあって、4Gが今後の技術として紹介されています)、ATM方式での多重化、AMRによる符号化、大勢で電波を共有するためのCDMA技術、ローミング番号・ホームメモリを使ったユーザーの位置情報の保存などについて説明がなされています。

ただ、携帯電話については約20ページのみで、さらっと書かれています。詳細については同じシリーズの以下の本が役に立つかもしれません。

感想

SIPの勉強のために、元となる電話の勉強をしておこう、と思ったのがこの書籍を手に取った理由です。電話とSIPは、細かいところはもちろん違いますが、大きく見ると、制御のやり取り・音声のやり取りといった考え方は、共通するものが感じられました。

技術というものは、ある日突然何もないところからポンっと生まれるわけではなく、既存の技術の上に積み重なってできるものなので、こういう書籍で基本を学ぶというのは、とても役に立つと思います。

この書籍では、たとえ話が多く使われて、分かりやすくなるように書かれています。ただ逆に、そのたとえ話が、かえって分かりにくいところもありましたが…

電話の仕組みを学ぶことで、電気・ネットワーク・変調・デジタル化・多重化・ルーティング・プロトコルの考え方についても学べ、勉強しておいて損はないと思います。電話は何といっても、最強のネットワークの一つですからね。